全101ページにおよぶ、c-slideのインバウンド特化型営業資料を徹底解説

湯淺 春樹

COO / デザイナー / セールス 湯淺 春樹

ぼくらの運営する資料作成代行サービス「c-slide」は、年間で200社以上の企業の資料作成支援を行い、リリースから3年で約850社の企業を支援しています。

マーケティング施策としてオウンドメディアの運用やMetaやGoogleなどの広告運用を行い、毎月100件程度のお問い合わせが発生し、お受けするすべての案件がインバウンド経由となっています。

そんなc-slideの営業資料は全101ページとなっており、商談からの受注率は50%を超えています。

今回は受注率50%を実現し、どの営業メンバーでも売れる状態を生み出すインバウンド特化の営業資料の作り方について解説していきます。

営業メンバーのマネジメント方法を含めたセールスイネーブルメントについては以下の記事で紹介しているので、興味ある方はぜひご覧ください。

目次

受注率を高める3つのポイント

営業資料を作成しても、成果に繋がらなければ意味がありません。ここでは、営業資料の活用を通して受注率を高める3つのポイントについて解説します。

  • 現場の声を第一優先にする
  • ヒアリングに厚みをもたせる
  • 導入事例ページは追加し続ける

1. 現場の声を第一優先にする

営業資料作成の推進者が完璧だと思う資料を作成しても、現場で活用されなければ何の意味もありません。また、見込み顧客と一番近い距離にいるのは現場の営業メンバーであり、マネジメント層よりも解像度高く顧客のニーズ等を理解している可能性も十分あります。

そのため、営業資料作成の際は営業メンバーの感覚や意見を第一優先にするようにしましょう。資料は作って終わり、ではありません。一番活用するメンバーの声を聞き、資料の改善に役立てる必要があります。

c-slideでも、営業メンバーのヒアリングを定期的に行い、約2年で10回程度の営業資料改善を行っています。

2. ヒアリングに厚みをもたせる

アウトバウンド営業では、ニーズが顕在化していない状態で商談を行うため、ニーズを引き出すためのトークが必要となります。一方で、インバウンド営業ではニーズが顕在化している状態で行う商談がほとんどです。

インバウンド経由で獲得する見込み顧客は、顕在化しているニーズ・課題に対しての解決策を模索しているため、「どうやって課題を解決し、どんな効果を得ることができるのか」をうまく伝えられるかが受注率を高めるポイントとなります。

そのため、インバウンド特化の営業資料ではヒアリング部分に厚みを持たせるようにしましょう。ヒアリングの質によって提案の質が左右されるため、資料に沿ってヒアリングをするだけで解決策を提示できる状態を目指すことが大切です。

c-slideの営業資料の約100ページ中の20ページ近くはヒアリングについての内容となっています。

3. 導入事例ページは追加し続ける

見込み顧客の導入意欲を高めるためには、解決イメージの解像度を上げることが重要です。導入事例を活用することで「自社と同じ課題を抱える企業はこんな効果を得られたんだ!」と思ってもらい、解決イメージの解像度を上げることができます。

すべての企業に当てはまる課題解決は存在しないため、ヒアリング内容をもとに見込み顧客に刺さりそうな事例を選択して提案することが必要になります。

事例の提案の幅を広げるために、導入事例ページは常に追加し続けるようにしましょう。c-slideの営業資料でも事例を追加し続け、約100ページ中の60ページ近くが事例についての内容となっています。

インバウンド特化の営業資料の作成方法

受注率を高めるポイントを踏まえて、営業資料の作成と運用の方法について解説していきます。

営業資料作成のポイントは、成果を出しているメンバーのトークフローを資料に落とし込むことです。見込み顧客と一番距離が近いのが営業メンバーであり、その中で成果を出すことのできているメンバーのトークをカンペ的に資料に落とし込むことでトークの統一化を図ることができます。

営業資料の作成は以下の順番で取り組みましょう。

1. 成果を出しているメンバーの商談に同席

ロープレだけでは把握することのできないトークなどがある可能性もあるため、実際の商談に同席します。資料を活用せずに商談をしている場合はトークの流れに着目し、既存の営業資料を活用している場合は「よく使うページ」や「使っていないページ」に着目するようにしましょう。

また、商談終了時に「なぜこの話し方をしたか?」や「どんな狙いで商談を行ったか」などの背景・意図を確認してください。

これらの情報はステップ③の「構成に落とし込む」工程で非常に重要なポイントとなります。

2.トークフローを文字起こし

商談に同席後、実際のトークフローの文字起こしを行います。

商談の最中は先述のポイントに着目する必要があるため、メモ程度で構いません。オンラインで商談をしている場合は録画、オフラインの場合は録音を行い、商談実施後に文字に起こしましょう。

構成に落とし込むことを考える必要はなく、営業トークの流れを意識して作成しましょう。

3. 構成に落とし込む

構成の作成は一番重要な工程です。以下を参考にまずは構成の骨子を作成し、各ブロックのページの順番や各ページに入れ込む情報は文字起こししたトークフローを参考に挿入して構成に落とし込みましょう。

c-slideのインバウンド用営業資料の骨子

  1. 表紙
  2. サービスの想い
  3. アジェンダの共有
  4. ヒアリング
  5. プランの紹介
  6. 事例紹介
  7. 今後のフロー
  8. c-slideの強み
  9. 競合比較

先述の通り、インバウンドではヒアリングが受注率を高めるポイントとなります。顕在化しているニーズに対してクリティカルなソリューション提案を行うためには、依頼背景や現状の課題感の詳細をヒアリングする必要があります。

c-slideでは以下のページを活用し、依頼背景のヒアリングと案件に対するヒアリングを行っています。

また、商談相手と言質を取るためにもヒアリング内容をその場で記載することができるデザインにしています。

このヒアリング内容をもとに最適なプランの提案(=ソリューションの提案)を行っています。

資料作成代行サービスはサービス内容がシンプルなため、「効果的な資料に仕上げてくれる」と理解してお問い合わせをする見込み顧客がほとんどです。そのため、サービスについての説明は行わず、ヒアリングの後にプランの紹介を行っています。

しかし、SaaSやツールなどの機能が多いサービスやプラットフォーム型のサービスの場合は、サービス内容を理解することができないまま問い合わせを行う見込み顧客も多いため、ヒアリングの後はサービスの紹介を行い、サービス内容の理解促進を行いましょう。

Coneの運営するBPOサービス比較サイト「b-pos」のインバウンド営業資料は以下の構成になっています。プロダクトやプラットフォーム事業を展開する方はこちらを参考に作成してください。

b-posのインバウンド用営業資料の骨子

  1. 表紙
  2. サービスの想い
  3. アジェンダの共有
  4. ヒアリング
  5. サービスの紹介
  6. 料金プラン
  7. 掲載フロー
  8. よくある質問

骨子が完成すれば、各ブロックにどんなページをいれるか、各ページにどんな情報をいれるかを記載し、構成案を作成しましょう。全体の流れを頭に入れながら作成できるよう、パワーポイントはなく、WordやNotionを用いることをおすすめします。

c-slideのインバウンド用営業資料の構成案

4.資料に起こす

構成案が完成すれば、パワーポイントに起こしていきます。

サービスサイトに掲載するダウンロード資料などの場合は、資料が独り歩きしても内容が伝わるようにリード文や詳細情報の挿入が必要となりますが、営業資料は口頭ベースでの活用となるため、すべての情報を挿入する必要はありません。

このように情報を図解するだけのページで構いません。あえて情報を減らすことで、対話ベースでページを進めることができ、先方が退屈に感じる一方的な説明になることを防げます。

資料のデザインに困ったら以下記事を参考に作成してみてください。営業資料で必要になるページの参考デザインを見つけることができます。

この記事で紹介している参考デザインのテンプレートを購入することも可能です。テンプレートをコピー&ペーストしてテキストを打ち込むだけでデザインが完成するため、資料作成の時短にも繋がります。資料作成が苦手な方はぜひ上記記事のフォームからご購入ください。

インバウンド特化の営業資料の活用方法

ここでは営業資料の活用方法について、商談中と商談後に分けて解説します。

商談中の活用方法

商談ではヒアリングが重要ポイントとなり、お問い合わせの背景や抱えている課題感、検討状況などに認識の齟齬がある場合、クリティカルなソリューションの提案ができなくなってしまいます。

また、ヒアリングでは深掘りのスキルが必要となるため、項目を用意するだけではメンバーによっては深いヒアリングができない可能性があります。そのため、ヒアリング内容はその場で記入するようにしましょう。

何かを覚えるためには紙に書くことが効果的と言われるように、ヒアリングした後にその場で記入を行うことで、一度自分の頭の中で理解してからアウトプットを行うため、不明点が明確になりヒアリングの深堀りに繋がりやすくなります。

認識齟齬が生まれている場合は商談相手も視覚的に認識することができ、補足説明や訂正を行ってくれる可能性が高まります。

商談後の活用方法

商談のほとんどはその場での受注・契約ではなく、社内のメンバーへの共有や稟議が必要となります。この社内共有や稟議を行う際、商談と同じ内容を伝えることができる方はほとんどいません。

伝言ゲームのようにサービスの内容や提案内容が決裁権者にうまく伝わらず受注できないという自体はBtoB営業ではよくあることです。

この現象をできるだけ減らし、受注率の底上げにつなげることができるのが社内検討用資料です。

社内検討用資料は新規で作成する必要はなく、サービス紹介資料と営業資料からのページ抜粋で作成することができます。

c-slideの社内検討用資料の構成

  1. 表紙
  2. サービス概要
  3. サービスの説明
  4. ヒアリング内容の整理
  5. プランの提案
  6. 今後のフロー
  7. 事例紹介

サービスの概要やサービスの説明はサービス紹介資料から抜粋して作成します。ヒアリング内容の整理では商談中に記載したヒアリング内容をコピーし、社内検討用資料にペーストするだけで完成します。

プランの提案や今後のフローは営業資料から抜粋し、事例紹介はあらかじめ様々な事例ページを挿入しておき、商談中に提案した事例のみを残して他事例を削除するだけで完成です。

商談後5分で商談相手にカスタマイズした社内検討用資料を作成することができる上に、先方社内のメンバーへの共有や稟議の際の伝言ゲーム現象が起こりにくくなります。

インバウンド特化の営業資料の改善方法

営業資料を作成・活用しただけで受注率が格段に上がることはありません。先述の通り、実際に活用している営業メンバーの声に耳を傾けて改善することが重要であり、自社の営業スタイルに合わせてカスタマイズすることで徐々に受注率が向上・安定してきます。

営業資料を作成した直後は1~2ヶ月に1回、受注率が安定してきたら3~4ヶ月に1回のペースで以下のポイントを抑えて改善を行いましょう。

  • 営業メンバーへの使用感ヒアリング
  • 導入事例の拡充

営業メンバーへの使用感ヒアリング

資料を作成しても、営業メンバーが効果を感じることができていなければ意味がありません。活用している実際の様子を把握するために商談に同席したり、「使いやすい部分はどこか?」「使いづらい部分はどこか?」を定期的にヒアリングするようにしましょう。

初期段階

c-slideの初期段階では「依頼背景などのヒアリングはしやすくなったが、依頼資料のヒアリングをどうすればいいのかわからない」という声から詳細ヒアリング項目の追加改善を行いました。

すべての資料ジャンルに合わせてヒアリング項目を用意することはできないため、相談をもらう回数が多い8つの資料ジャンルごとに詳細ヒアリングページを作成しました。

受注率が安定してきた段階

受注率が安定してきた段階では「LTVを上げるための提案をしたいが、どうすればいいのかわからない」という声が営業メンバーから上がったため、資料の活用事例ページの追加改善を行いました。

このような改善を繰り返すことで、営業メンバーが使いやすいかつ見込み顧客に刺さりやすい内容にカスタマイズでき、受注率が20%→30%→40%→50%と向上していきました。

導入事例の拡充

冒頭でも解説した通り、受注率を高めるためには導入事例の拡充が必要になります。見込み顧客の抱える課題や業種、サービスなどに近しい導入事例を紹介することで導入効果のイメージを抱いてもらいやすくなり、受注に繋がりやすくなります。

また、誰もが知っている大手企業や特定の業界のトップ企業などの事例を見せることでサービスに対する信頼感の醸成を行うこともできます。

c-slideの場合、納品物と活用支援の2つの軸で50個近くの事例を用意しています。

納品物事例
活用支援事例

最初から数十個の事例を用意することは難しいため、以下の優先順位で事例を拡充させていきました。

  1. 問い合わせ回数が多いニーズに効果的な導入事例:サービス紹介資料・営業資料
  2. 問い合わせ回数が多い業界に効果的な導入事例:SaaSプロダクト・ITツール系
  3. 知名度の高い企業・サービスの導入事例:AlphaDrive / NewsPick・ガイアックス等
  4. 特定の業界のトップ企業の導入事例:うるる / DORIRU等

①~③までは支援内容や社内での知名度から企業を選定することが可能ですが、④の特定の業界のトップ企業は業界が違う人間であれば判断がつきません。そのため「企業名を検索し、他サービスサイトで導入事例として載っているか」を判断基準とし、事例の拡充を行っています。

事例の拡充はマーケティング側のメンバーともコミュニケーションを取り、常に追加し続けることを意識しましょう。

さいごに

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

効果的な営業資料の作成方法やテンプレートなどは世の中にたくさん情報が転がっていると思います。しかし、作るだけで成果が飛躍的に向上するわけはなく、活用方法の工夫と営業メンバーに耳を傾けた改善の繰り返しが必要です。

c-slideも最初から完璧な営業資料を使っていたわけでもなく、最初から受注率が50%を超えていたわけでもありません。定期的なヒアリングからの改善を繰り返した結果、100ページを超える資料となり、受注率の向上にも繋がっています。

本記事を参考に営業資料の作成・活用・改善を行い、少しでも皆さんの事業の成長にお役に立てれればとてもうれしいです。作成方法や活用方法で課題感感じたら、ぜひ資料作成代行サービス「c-slide」にお気軽にご相談くださいませ。