クロスセルとは?戦略の立て方と3つの実践方法

佐藤 立樹

代表取締役 佐藤 立樹

クロスセルは顧客に追加で別サービス・製品を販売することで顧客単価を上げる営業手法。予算が限られている企業では、リード数が伸び悩むことも想定されるため、同じ客数で売上を向上させられる可能性があるクロスセルは有効な手段となります。

そこで本記事では、クロスセルの戦略の立て方から、実際に現場で使える3つの実践方法を紹介します。

本メディアは小さなチームで大きな仕事をする最高の会社を目指す株式会社Coneによる「小さな企業が成果を出すための施策」を更新していきますので、よければ他の記事も見てみてください。

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目次

クロスセルとは

クロスセルとは、サービスAの販売プロセスの中で、追加で異なるサービスBを販売することです。リード獲得数はどこかで頭打ちになるのが一般的で、新規顧客獲得数が伸び悩むケースがあります。(売上=客単価×客数×購入頻度)

そこで、複数サービスを販売することで、客数を増やさずとも顧客単価を上げ、売上を上げることができるのがクロスセルの最大のメリットです。(売上=客単価×客数×購入頻度)

アップセルとの違い

クロスセルとよく比較されるのがアップセル。アップセルも客単価を向上させる営業手法として紹介されますが、販売するものが異なります。

アップセルサービスAの「上位プラン」を提案する手法
クロスセルサービスAと「サービスB」を提案する手法

たとえば、月額5万円のクラウドサービスを販売しているとして、7.5万円の上位プランを提案するのがアップセルですが、客単価向上「率」には限界があります。

しかし、月額5万円のクラウドサービスとともに、月額10万円の業務のアウトソーシングを提案するとすれば客単価は大幅に向上することとなるため、クロスセルは客単価向上という観点で非常に有効な手段になります。

小さな企業の武器となる理由

広告に投資できる金額が大きいほど、新規顧客からの問い合わせを増やすことができますが、小さな企業は予算が限られているため、大手企業のように高額を広告に投資するのは難しいことはイメージがつくと思います。

客数の伸びに限界がある小さな企業には、ちょうどクロスセルという手法が向いています。クロスセルは新たなサービスをつくり提案し客単価を向上させる手法ですが、大手企業ではこの「新たな」サービスをつくるのに、人事異動・予算組み・事業計画立案・稟議、が必要になるためなかなか前に進みません。

一方で、小さな企業であれば上記のような工程が必要なく、素早くトライ&エラーを繰り返すことができるためクロスセル向きの企業形態と言えます。客数向上に課題を感じている小さな企業は一度クロスセルの導入を検討してみると良いかもしれません。

クロスセルの戦略の立て方

本メディアを運営している株式会社Coneは、メンバー20名程度(正社員6名 ※ 2024年6月時点)で、5つの事業を運営しています。小さなチームでクロスセルを実践してる企業だと言えると思ます。Coneが実際に事業を立ち上げた際の戦略について説明します。

  • 1:自社顧客の隣接する課題を理解する
  • 2:自社リソースの整理から売るサービスを決める

1. 自社顧客の隣接する課題を理解する

クロスセルは、サービスA+Bを販売することなので、サービスBを売るにはサービスAの見込み顧客・既存顧客の課題を理解する必要があります。

顧客の問い合わせ内容や商談録画、ヒアリング内容の見返しなどを通して顧客課題の理解をしましょう。複数名再度ヒアリングの機会を頂戴して課題への理解を深めるとより解像度が高くなります。そして、サービスAの顧客課題を理解することができれば、その課題と隣接する課題を見つけましょう。

Coneの場合だと、顧客へのヒアリングを通して、以下のように隣接する課題を発見することができました。

2. 自社リソースの整理から売るサービスを決める

自社顧客の隣接課題が把握できたら、その課題を解決するサービスをつくる必要がありますが、「つくって売れるかどうか」が重要になります。

自社にソフトウェアの開発ができるメンバーがいないのに、それをつくって売ることはできません。自社の「メンバーの強み」「これまでの実績」等を整理して、見つけた隣接課題を自社で解決できるものを探します。

先ほどの、Coneの例で考えると

上記は非常に簡単に示していますが、理解しておきたいのは「自社のリソースを活かして価値を提供できるかどうか」が大事ということです。

クロスセル実践方法

売るサービスが決まったら、もしくは元々クロスセルできるサービスがあるなら、次は実際に販売します。ここでは、実際に使えるクロスセル実践方法を3つ紹介します。

  1. 提供フロー内・サポート内容に組み込む
  2. 今後の流れとして示す
  3. 定期的に連絡を取る仕組みをつくる

① 提供フロー内・サポート内容に組み込む

ひとつ目は、サービスAの提供内容に「最初から」組み込んでおくという方法です。クロスセルのイメージは追加販売ですが、追加で顧客に提案するのは難しいという方も多いと思います。そこで、最初から組み込んでおくことでスムーズにクロスセルを実施し、客単価を上げることができます。

Coneでは記事作成代行サービスの提供内容に、進捗管理ツールを組み込んで、スムーズに記事管理ができるフローも一緒に提供しています。この際「セットで提供することでしっかりと価値が増大されている」かどうかを確認しましょう。

② 今後の流れとして示す

こちらも最初に示しておくスタイルのクロスセル実践方法です。初回提案時に複数のサービスを導入してもらうことで成果が最大化するということを示します。

初回の依頼から成果が最大化するまでの時間軸・スケジュールを描いておき、それをミーティング時に提案します。見込み顧客は依頼する前がもっとも期待感が高く、依頼後時間が経てば経つほどベンダーのことは忘れていきます。

導入事例打診を最初の受注段階で実施するのと同じように、クロスセルは初回提案時に行うようにしましょう。

Coneでは、資料作成代行サービスの初回提案時に、以下のように記事作成代行サービスも併用することでリード獲得数が増大するという提案を実施しています。

③ 定期的に連絡を取る仕組みをつくる

最初にクロスセルの提案をしたとしてもそれが実る確率は高くありません。そのため、定期的な連絡により思い出してもらうことが重要になります。

Coneが実施しているのは以下のとおり。

■ 使い方納品

制作物納品時に、制作物の使い方の動画を撮影し制作物と共に納品。その動画内で他のサービスも提案。

■ 振り返りミーティング

制作物納品の一定期間経過後、制作物の成果の確認とより効果的に活用するための方法のレクチャーを実施。そのミーティングの際に、改善 / 追加提案を必要としている顧客に他のサービスを提案。

■ チャットに招待してもらう

制作期間中に顧客の社内チャットに招待してもらい、いつでも気軽に連絡が取れる状態に。チャット内で顧客が必要としている情報の提供(Coneはメルマガを実施していないのですが、これがそれに当たる気もします)

特に、振り返りミーティングはどの企業でもすぐに実践できるものですので、まずはここからはじめることをおすすめします。ただ提供サービスの顧客満足度が高い・自社や担当が信頼されていることが前提となります。それがない場合、顧客からすれば時間をとられるだけの無駄なミーティング打診となるため注意が必要です。

クロスセル戦略を実施している企業事例

実際にクロスセル戦略を実施している企業事例を紹介します。

ニュートラルワークス(BPO系)

ニュートラルワークスは、代行やコンサルティングを提供する企業のクロスセル戦略の参考となる企業です。

デジタルマーケティング支援を行うニュートラルワークス。SEO関連サービスでも「SEOコンサルティング」を中心に「被リンク運用代行」や「SEO内部施策代行」などを提供し、リード獲得という同一課題を解決するWeb広告運用関連サービスメニューも8つ提供しています。

引用:株式会社ニュートラルワークス

LayerX(プロダクト系)

LayerXは、企業の請求書処理、経費精算、稟議申請、法人カードなどの支出管理を効率化するソフトウェア「バクラク」を提供する企業。こちらは、プロダクトを複数展開するクロスセル戦略を採っています。

最初は請求書受領クラウドから始まり、隣接する請求書発行や経費精算などに特化したプロダクトを次々にリリース。

現在は請求関連業務はすべてバクラクで実施できるようなプロダクトラインナップとなっています。

引用:株式会社LayerX

Cone(複合系)

最後に弊社Coneですが、コンテンツマーケティングの課題を解決するサービスを複数展開しています。BtoBのコンテンツマーケティングに必要な、資料・記事の作成代行事業。記事を読んで資料をダウンロードするためのオウンドメディアテーマ販売。

引用:株式会社Cone

さらに、記事作成から公開までの進捗管理ツールの提供。また、自社でコンテンツマーケティングができない際に活用できるように比較サイトの運営。

と、代行サービスに加え、プラットフォームやプロダクトも提供し、総合的に隣接する課題を解決するクロスセル戦略を採っています。

まとめ

クロスセルは営業現場だけで完結するものではなく、組織・チーム全体で事業づくりの観点から実施する必要があるため、難易度は高いかもしれません。

しかし、小さな企業にとっては莫大な広告費をかけずとも売上が2倍にも3倍にもなる可能性がある手法ですので、一度挑戦するのもありだと思っています。(小さな企業は失敗しても損失が少ないので)

ConeTent(=本メディア)では、小さなチームが成果を出すための施策を更新していますので、また見に来てくださいね。

※ 株式会社Coneは「小さなチームで大きな仕事をする最高の会社」をSmall up企業と呼ぶことにし、それを目指しています。応援してください。

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