エクセルを用いた商談管理のコツ【すぐに使えるテンプレート付き】

湯淺 春樹

COO / デザイナー / セールス 湯淺 春樹

「商談管理をしたいが、どう実施すればいいかわからない」
「SFAを導入するか迷っているけど、費用をかけることができない」

このような悩みを抱える経営者、営業マネージャーは多いのではないでしょうか。

本記事ではコストを抑えて実施できるエクセルを用いた商談管理のポイントから管理方法まで解説していきます。

エクセル(Googleスプレッドシート)のテンプレートも準備していますので、商談管理の第一歩としてぜひご活用ください。

目次

商談管理とは?

そもそも商談管理とは何かについて、商談管理の役割と、営業管理・案件管理との違いから解説します。

商談管理の役割

商談管理は、受注に向けたネクストアクションを明確にする役割を担っています。

商談相手の状況に合わせたネクストアクションを設定するために、商談相手の基本情報や導入確度など、以下の項目の管理を行います。

  • 商談日
  • クライアント名
  • 営業担当
  • 対象サービス
  • 与件化金額
  • 受注確度
  • ステータス
  • 失注理由
  • 先方担当者
  • 役職
  • 予算
  • 決裁権の有無
  • ニーズの深さ
  • 導入予定時期
  • 競合比較の有無
  • 再連絡日
  • ネクストアクション

例えば、決裁権はないが、提案金額は予算に収まっていて導入予定時期が直近のクライアントの場合、「担当者に連絡し、上長との提案の時間を設けてもらう」など、受注確度を高めるための明確なネクストアクションの設定が可能になります。

営業管理・案件管理との違い

商談管理に似ている管理手法として、営業管理、案件管理が存在します。

商談管理はあくまでも「商談」を管理するものであり、案件管理は「案件」を管理するものです。よって商談管理は、商談後から受注までのプロセスを管理し、案件管理は受注後から納品・契約満了までのプロセスの管理を行います。

そして、この2つを含めた営業活動全体を管理するものを営業管理と呼びます。

商談管理を活用するメリット

商談管理を活用するメリットは以下の3つが挙げられます。

  1. 受注率の向上
  2. 営業の属人化解消
  3. マネジメントコストの削減

1. 受注率の向上

先述の通り、商談管理では商談相手の情報を管理し、状況に合わせた受注確度を高めるネクストアクションを設定するため、受注率の向上が見込めます。

商談時に契約に至るケースは稀に存在しますが、商談後に他社の話を聞いたり、社内稟議が必要なケースがほとんどです。この商談後~意思決定までのリードタイムの間で適切なコミュニケーションを取れるかどうかで受注確度は左右されます。

商談時にヒアリングした商談相手の情報を正確に把握しておくことで、自社が実施するべきアクションが明確になり、受注率を底上げすることができます。

2. 営業の属人化解消

ほとんどの営業組織では、商談の内容や受注までのアクションは各営業メンバーが個人で管理しています。結果、どんな情報をヒアリングし、どんなアクションを行っているのかがブラックボックス化されてしまうため、成果が高いメンバーと低いメンバーの差が大きく開いてしまいます。

商談管理を行うことで、ヒアリングした内容やネクストアクションが可視化されるため、誰でも他の営業メンバーの情報にアクセスすることができるようになります。

情報のブラックボックス化を防ぎ、属人化を解消することで、成功したケース、失敗したケースを共有することができるので、成果の統一化にも繋がります。

マネジメントコストの削減

営業マネージャーは毎週の定例などの時間で各案件の進捗や商談の状況をメンバーにヒアリングしていると思います。メンバーが2~3名の場合、割くコストはそこまで多くありませんが、5~10名以上になるとかなりの工数を割くことになります。

各メンバーの商談情報を可視化することで、営業マネージャーは「商談どうだった?」「どうやって受注していく?」と都度コミュニケーションをする必要がなくなり、可視化された情報を見ながらネクストアクションに対するアドバイスをするだけでマネジメントが可能になります。

エクセルでの商談管理のポイント

商談管理に取り組む上で必要になるポイントについて解説します。

  1. 入力工数をなるべく減らす
  2. 定点観測は欠かさない

1. 入力工数をなるべく減らす

日々クライアントコミュニケーションや営業活動に時間を費やしている営業メンバーは時間がかかってしまう業務は後回しにしがちです。後回しになることが増えれば「めんどくさい、、」と感じ、活用しなくなるメンバーが出てきてしまいます。

このような自体を避けるために、入力項目はネクストアクション設定のために必須の情報だけに絞り、できるだけ入力の工数をかけないように工夫しましょう。

2. 定点観測は欠かさない

商談情報を管理しておくことは、受注要因の分析や失注要因の分析にも大いに役立ちます。入力するだけではなく、毎週の定例の時間などでメンバー全員で振り返る時間を作りましょう。

成功したケース、失敗したケースを共有することでアクションの精度を高めることに繋がります。活用してこそ管理の効果が発揮されます。定点観測は欠かさないようにしましょう。

SFAでの管理とエクセルでの管理の違い

商談管理で使われるツールとしてSFAが挙げられます。ここではSFAでの管理とエクセルでの管理、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

SFAでの商談管理

SFAとは、「Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)」の略語で、営業支援システムと呼ばれています。

メリットは、商談管理に加えて案件管理なども行える上に、自動で集計や分析なども可能なため、活用コストを大幅に削減することができる点です。

デメリットは、導入に費用が発生する点です。1ユーザーあたり2万円前後が相場となっているため、大きな組織の場合は数十万から数百万のコストが発生します。

メリット・自動集計や分析機能で活用コストを削減可能
デメリット・導入に費用が発生(1ユーザーあたり2万円前後)

関わる営業メンバーが10名以上と多い企業や事業ごとに営業部が存在する企業などで、商談情報の集計や分析に時間がかかる企業におすすめです。

※)弊社では、SFAは入力工数が大きい割に事業インパクトが少なかったため「検討度可視化・案件管理ツール」contentsworkを開発し、活用しています。

社内管理だけではなく、顧客とのコミュニケーションもこのツール内で実施でき、見込み顧客ごとの検討度がスコア算出可能・興味関心ごとを行動履歴から把握可能、なため成約率向上にも寄与しています。ご興味がある方は以下からサービスページにジャンプしてご覧ください。

「検討度可視化クラウド」contentsworkサービスページへ

エクセルでの商談管理

エクセルやスプレッドシートを用いて行う商談管理のメリットは導入に費用が費用が発生しない点です。WindowsユーザーやMicrosoft365を契約している場合はエクセル、GoogleWorkspaceを契約している場合はスプレッドシートを無料で活用できます。どちらも同時編集が可能なため、常に最新の情報にアップデートすることも可能です。

デメリットは、初期構築が必要な点です。専門知識等は不要なため、エクセルの活用に慣れている方であれば簡単に構築ができますが、慣れていない方は構築するのに時間を要する場合があります。

メリット・導入に費用が発生せず、無料で活用できる
デメリット・初期構築が必要であり、構築に時間を要する場合がある

関わる営業メンバーが10名以下と小規模で、まずは費用をかけずに商談管理に取り組みたい企業におすすめです。

筆者が所属する株式会社Coneのセールス部で実際に活用している商談管理シートのテンプレートを以下に用意しています。テンプレートを活用すると初期構築が不要になるため、エクセルやスプレッドシートの活用に慣れていない方はぜひご活用ください。

【テンプレート】商談管理シートの使い方

最後に商談管理シートのテンプレートの使い方について解説します。シートは月ごとに最新にできるよう、1年分のシートをタブに用意しています。

シート内の情報を大きく4つの項目に分けてそれぞれ解説していきます。

  • 商談情報に関する項目
  • 商談相手の基本情報に関する項目
  • ネクストアクション
  • 数値分析

商談情報に関する項目

商談を実施した後、以下の項目をシートに記載していきます。

商談日商談を実施した日付
クライアント名商談相手の正式名称
営業担当商談を担当した自社のセールス担当
対象サービス提案した自社のサービス
与件化金額提案した金額 or 見積書の金額
受注確度受注に至る可能性(担当者の所感でOK)
ステータス受注 or 検討中 or 失注から選択
失注理由失注の場合のみ、先方からヒアリングし記載

特に重要な項目は与件化金額と失注理由です。

与件化金額はネクストアクションを決める上で重要な項目となるので必ず記載するようにしましょう。10万の案件と100万の案件の受注確度が50%の場合、100万の案件に力を入れて追いかけ連絡をする、のように優先順位付けに役立ちます。

失注理由は受注率を高めるための分析に役立ちます。競合比較で失注した場合でも「安さ」で負けたのか、「実績」で負けたのかで次の商談に活かせる内容が変わります。分析し、改善していくために失注時は先方に失注理由をヒアリングし、記載するようにしましょう。

商談相手の基本情報に関する項目

商談中にヒアリングした商談相手の情報について記載します。この項目は受注に向けた質の高いネクストアクションを決める上で重要な項目となります。

先方担当者商談相手の名前
部署・役職商談相手の所属する部署名と役職
予算導入する際の予算(大体でOK)
決裁権決裁権の有無(上限がある場合は金額まで記載)
ニーズニーズの深さ ex.) 今すぐ欲しい、比較検討中、など
導入予定時期1ケ月以内、3ケ月以内、半年以内、半年以上
競合比較競合サービスの話を聞いているか、検討しているか

どの情報も商談の中で担当者にヒアリングをしなければ得ることのできない情報となっているので、必ずヒアリングするようにしましょう。各項目を正確に把握することでクリティカルなアクションを働きかけることができ、効率よく受注数を増やすことに繋がります。

ネクストアクション

冒頭でも記載した通り、商談管理は「ネクストアクションを明確にするため」に行います。記載した商談情報や先方の基本情報はネクストアクションを決めるための判断材料となります。

毎週の定例などでメンバーとマネージャーで商談管理シートの情報を見ながらネクストアクションを決めることで受注率を高めることができます。

与件化金額¥500,000
受注確度50%
部署・役職マーケティング部・部長
予算¥300,000
決裁権あり
ニーズ比較検討中
導入予定時期1ケ月以内
競合比較あり
商談後の記載例 ※一部抜粋

このような与件の場合、マーケティング部の部長で決裁権はあるものの、先方の予算に収まっていていない金額で提案を行っています。予算内の提案であれば担当者の決裁権限範囲で発注可能かもしれませんが、追加で社内稟議が必要な可能性が高くなっています。

また導入予定時期が直近であるにも関わらず複数社の話を聞いて比較検討をしているため、適宜フォローをしていかなければ価格で他社に流れてしまうことも十分考えられます。

そのため、価格ではない部分の重要性を説き、比較検討に勝つためには検討ポイントを明確にして、判断材料となるコンテンツを提供することが重要です。この案件でのネクストアクションは「週明けに架電し、検討状況をヒアリング。比較検討に必要なコンテンツを送付する。」に設定するのがベストです。

数値分析

数値分析は記載の必要はなく、すでに記載している情報からシート上部の商談数や与件数が表示される仕組みになっています。

商談の目的は売上の創出です。そのため、商談を通して何件受注したのか、売上をどのくらい積み上げることができたのかは常に把握する必要があります。

以下の項目で数値が表示されます。毎週の定例で各メンバーと共通認識を持てるようにしましょう。

商談数実施した商談の数を表示(記載されているクライアント名の数をカウント)
与件化数ステータスが「受注 or 検討中」の与件数を表示
与件化額ステータスが「検討中」案件の合計金額を表示
受注数ステータスが「受注」案件の数を表示
受注率商談に対しての受注数の割合を表示
受注額ステータスが「受注」案件の合計金額を表示

まとめ

商談管理の役割から営業管理・案件管理の違い、エクセルを用いた管理方法について解説しました。

商談管理の目的は管理することではなく、受注率を高めるためのネクストアクションを設定することです。判断材料となる項目の準備も大事ですが、項目にとらわれすぎず、まずはアクションを明確に決めることを意識しましょう。

エクセルで商談管理を実施したい方は下記テンプレートをぜひご活用ください!