【テンプレート付】Googleスプレッドシートを用いた売上管理の方法を解説

湯淺 春樹

COO / デザイナー / セールス 湯淺 春樹

「正確な売上数値の把握をしたいけど、やり方がわからない、、」
「案件数が増えてきて請求漏れなどのヒューマンエラーが生じてしまっている、、」

など、案件管理・売上管理に悩みを抱える創業間もない経営者の方、営業マネージャーの方は多いのではないでしょうか。

本メディアを運営する株式会社Coneはホームページ制作やデザイン制作のクリエイティブ事業を行っていた創業当初からスプレッドシートを用いて売上管理を行っています。

資料作成代行サービス「c-slide」を主力事業としている今では月間約100件の案件依頼を受けていますが、SFAやCRMを一切使わず、スプレッドシートだけで会社全体の売上管理を行っています。

本記事ではGoogleスプレッドシートを活用した売上管理の方法について解説していきます。

Coneで実際に使っている売上管理のテンプレートを用いて解説していくため、読み進める前に以下リンクからテンプレートにアクセスしていただくとわかりやすいと思います。

目次

売上管理で実現できること

まずは、売上管理を行うことで何を実現できるのかについて解説します。大きく分けて以下の3つのメリットがあります。

  • 正確な案件進行を実現できる
  • 課題を迅速に把握することができる
  • 課題解決アクションの戦略を立てることができる

正確な案件進行を実現できる

クリエイティブ制作や開発などの受託型ビジネスでは、受注すれば売上が上がるわけではなく、クライアントへ納品することで売上が上がる仕組みになっています。売上計上をゴールとした場合、受注がゴールではなく、納品がゴールとなります。

そのため、「大型案件の納品が翌月にズレて、資金繰りがうまくいかなくなった」「納品後に請求書を送付し忘れ、入金がない」など事象が起こりがちです。

このような事態を避けるためには、誰が、どのくらいの売上規模の案件を持っていて、現状の案件ステータスがどうなっているのか、を正確に把握する必要があります。

売上管理=案件管理なので、売上管理を徹底して行うことで正確な案件進行を実現でき、納品月のズレや請求漏れなどの最大限防ぐことができます。

課題を迅速に把握することができる

また、売上管理を行うことで現状の売上数字を可視化することができるため、課題を迅速に把握することができます。

先程の「大型案件の納品が翌月にズレて、資金繰りがうまくいかなくなった」ケースの場合、売上管理をしていなければ、当月末もしくは翌月末の入金のタイミングで売上が足りていないことに気づくことになります。

売上管理・案件管理をしっかりと行っていれば、目標売上と当月売上の乖離状況と各案件の進行ステータスが可視化されているため、「この大型案件が翌月にズレてしまったら資金繰りに困ってしまう」という課題を早めの段階で把握することができます。

課題解決アクションの戦略を立てることができる

早めの段階で課題を把握することができれば、解決のための戦略を立てることもできます。「大型案件が翌月にズレそう」とわかった場合、解決のために以下のアクションが考えられます。

  1. 大型案件を当月に納品できるようにアサインメンバーを増やす
  2. ズレる金額分、翌月の納品案件を今月で納品できるように進行する
  3. 当月納品案件を新規で獲得する

メンバーひとり当たりの抱える案件数が少ない場合は①、メンバーの案件数が多くアサインできない場合は②、②を実施しても現実的に金額が足りない場合は③、などのように売上管理・案件管理を行っていれば戦略を立てることも可能になります。

売上管理に必要な5つの項目

ここでは、売上管理を行うために必要な5つの項目について解説します。

  • 売上実績
  • 売上目標
  • 目標と現状の乖離状況
  • 原価
  • 販管費

売上実績

売上実績とは、各案件の売上額を合計した各月の売上合計、年間での売上合計を指します。

売上管理はまさにこの売上実績を管理するためのものです。

売上目標

どの企業も会社の成長、事業の成長のために売上目標を設定しているはずです。

個人事業主の方や数名規模の企業の場合、共通認識として売上目標の数値を持っている場合が多いですが、十数名以上の規模になってくると、詳細の売上目標数値を共通認識として持つことが難しくなってきます。

そのため、毎日アクセスする売上管理シート内に売上目標を明記することで同じ目標を追いかけやすくなります。

目標と現状の乖離状況

目標を達成するためには、現状との乖離を把握し、課題を見つけて改善アクションを行うことが必須です。売上管理を通して正確な現状の数値、売上目標を把握していなければ目標を達成することも課題を発見することもできません。

乖離を可視化することで目標達成のためのアクションを実行しやすくなります。

原価

100万円の案件を獲得しても、原価に90万円かかっていれば利益は10万円しか残りません。案件進行にかかる人件費(販管費)を反映すると赤字になってしまいます。50万円の案件で、原価が10万円しかかからないのであれば利益は40万円となり、利益率は高まります。

このように各案件にどのくらいの原価がかかっているかを把握することは売上管理を行う上でとても重要になります。

販管費

販管費とは、販売費及び一般管理費の略称で、企業の営業活動にかかる費用を指します。ホームページを制作するために、業務委託のエンジニアに依頼する場合は「原価」となりますが、この案件を社内のディレクターが担当している場合、ディレクターの人件費は「販管費」となります。

原価0円で500万を売り上げても、販管費で480万使っていれば20万円しか営業利益は残りません。会社全体としてどれくらいの支出があるのかを把握するために、販管費は重要な項目となります。

【テンプレート】売上管理シートの使い方

冒頭でアクセスいただいたテンプレートを用いて、以下2つのシートの使い方の解説をしていきます。実際の記入例を見たい場合は「【記入例】案件管理」「【記入例】売上管理」タブをご覧ください。

  • 案件管理シート
  • 売上管理シート

案件管理シート

案件管理シートでは、各案件の売上金額や進行ステータスの管理を行います。

1行目の青色の項目へ必要情報を記載していきます。オレンジ色の項目は自動で数値が入力されるため、記載する必要はありません。それぞれ解説します。

  • クライアント名
  • 事業
  • 案件概要
  • 担当者名
  • 売上
  • 原価
  • 社内担当者名
  • 売上月・入金月
  • ステータス
  • 請求書
  • 着金
  • ネクストアクション・備考

クライアント名

案件の依頼主の企業名を記載します。リピート回数などを分析する際にクライアント名でフィルターをかけることができるよう、「株式会社Cone」のように正式名称で記載するようにしましょう。

事業

複数事業を展開している場合は「クリエイティブ事業」「コンサルティング事業」のようにどの事業に紐づく案件なのかを記載するようにしましょう。事業別ではなく「ホームページ制作」や「デザイン制作」のようにジャンルで記載しても問題ありません。

この項目は以下の「売上管理シート」の「A4~6」に記載している項目からプルダウンで選択できる仕様になっています。そのため、一番はじめに以下の項目に事業名もしくはジャンル名を記載するようにしてください。

案件概要

同じクライアント名、同じ事業だったとしても、案件の区別がつくように各案件の概要を記載します。クリエイティブ事業の場合「〇〇サービスのサービスLP制作」や「社内発表用のスライド制作」のように他メンバーが見てもわかる粒度で記載しましょう。

担当者名

複数案件を抱えている場合、担当者の名前を思い出すのが難しい場合もあるはずです。メールを遡って担当者名を思い出す作業をなくすためにも、先方の担当者名を記載しましょう。

売上

各案件の売上金額を税抜きで記載します。右隣の「売上(税込)」の項目は、税抜きの売上金額を記載すると自動で反映されるため、記載の必要はありません。

原価

業務委託費などの案件を納品するために発生した費用を記載します。売上と同様、税込みの原価学は自動で反映されます。また、売上から原価を差し引いた粗利と粗利率も自動で反映されるため、記載の必要はありません。

社内担当者名

各案件を担当している営業、ディレクター、クリエイター(デザイナーやエンジニア等)を記載します。クライアント名同様、フィルターをかけることができるよう記載名は統一しましょう。

売上月・入金月

確定前の案件を除き、受注した案件は売上月を記載します。4月と記載すれば売上管理シートの4月の売上に追加され、5月と記載すれば5月の売上に追加される仕様になっています。確定前の案件に売上月を記載してしまうと、売上実績に反映されてしまうためご注意ください。

入金月はクライアントの支払いサイトに合わせて記載します。4月売上・支払いサイト30日の場合は5月と記載、4月売上・支払いサイト60日の場合は6月と記載しましょう。

ステータス

ステータス欄は「失注」「確定前」「受注」「進行中」「納品完了」「入金済」から選択します。失注を選択すればグレー、受注を選択すればブルー、進行中を選択すれば赤、ようにステータスごとに行の色が変わる仕様になっています。

請求書

請求書の送付漏れを防ぐため、納品後に請求書を送付した案件は「送付済」を選択します。ステータスが納品になっているにも関わらず、請求書が送付済になっていない案件は送付漏れが起こっている可能性が高いため、確認するようにしましょう。

着金

着金はクライントから入金が合ったかを確認するための項目です。経理作業の消込業務のようにイメージです。入金管理は会計ソフトなど他のツールを用いている場合は削除しても問題ありません。

ネクストアクション・備考

各案件のネクストアクションとクライアントの情報を記載する項目です。進行中であったとしても「クライアントからの素材提供待ち」か「初稿制作中」かで担当のネクストアクションは変わります。アクション漏れを防ぐためにもメモのように活用してください。

備考欄は「リピートの可能性あり」「制作中に担当者が退職の可能性あり」など、他メンバーに共有するべきクライアント情報を記載することで、誰でも閲覧することができます。

売上管理シート

売上管理シートでは、各月・年間の売上実績、目標との乖離状況を可視化するシートです。

「売上管理」「売上目標」「販管費」の3つの項目について解説します。

売上管理

売上管理は案件管理シートで記載した情報をもとに自動で数値が反映されるため、記載する必要は一切ありません。(※先述のA4~6の項目だけ変更する必要あり)

各事業の各月の売上、全社での合計売上に加え、発生した原価とそれに紐づく原価率、売上から原価を差し引いた売上総利益、売上総利益から販管費を差し引いた営業利益まで一覧で見ることができます。

売上目標

売上目標欄では、各事業の売上目標数値を記載します。合計の売上目標は自動で反映されるため、各事業の数値をすべての月に記載しましょう。

売上目標を記載することで、現状の売上との乖離である目標乖離額が表示されるようになります。

販管費

販管費欄には人件費やオフィス代など、営業活動にかかっている支出を記載します。販管費内の項目はよくある支出項目を記載していますが、会社によって会計上の仕訳項目が異なる可能性があるので項目は自由に変更いただいて問題ありません。

さいごに | 使っている関数

テンプレートを用いて活用方法を解説しましたが、すべての事業者がこのシートをそっくりそのまま活用できることはないと思っています。スプレッドシートでの管理に慣れてきたら項目の削除や追加などで、より使いやすいようにぜひカスタマイズしてください。

エラーがでてしまった場合や関数がおかしくなってしまった場合に役立つよう、このシートで使っている機能と関数は以下にまとめています。複雑な関数は全く使っていないので、参考記事を見ればすぐにマスターできるようになりますよ。

機能・関数参考記事
データの入力規則https://www.nojima.co.jp/support/koneta/157321/
条件付き書式https://rakumo.com/gsuite/gws-hint/google-sheets/conditional-format/
四則演算https://azby.fmworld.net/lesson/excel-function/001/
SUM関数https://azby.fmworld.net/lesson/excel-function/001/
SUMIF関数 / SUMIFS関数https://azby.fmworld.net/lesson/excel-function/002/
IFERROR関数https://azby.fmworld.net/lesson/excel-function/018/

冒頭でご紹介したテンプレートにアクセスせずにここまで読み進めてしまったよ〜という方は以下からテンプレートにアクセス可能です。

またConeでは売上管理を目的として、売上金額や売上月などをメインに案件管理をスプレッドシートで行っていますが、案件のステータス管理にはcontentsworkとformworkというツールを活用しています。

contentsworkは、商談後の顧客の検討状況をスコアで可視化することができることに加え、「なにに関心があるのか」まで把握可能なため優先度をつけた顧客フォローが実現可能。スコアが一定値に達すると自動で「依頼可否」の案内を実施するため、フィールドセールスの工数を削減しながら成果を最大化するツールとなっています。

また、商談前の見込み顧客へのコンテンツ送付・自動フォローも可能なため、資料請求リード・展示会獲得リード・ウェビナー参加リードからの商談化も図ることができます。

商談化率・成約率の向上を図りたいと考えている方はぜひcontentsworkをご活用ください。

formworkは、ステップ形式でワークフローを作成することができ、フォーム項目も用意できるため「サービス申し込み〜納品」までのフローをformworkで管理しています。カンバンビューで案件を一覧で確認することができるかつ、期日を設定していれば期日に自動で担当者に通知がいくため、コミュニケーションコストを削減することができます。

クライアントワークや社内業務の効率化を図りたいと思っている方はぜひformworkをご活用ください。