月次売上3倍成長を実現した、営業組織を再建するための7つの取り組み
ぼくらの運営する資料作成代行サービス「c-slide」は2021年にリリースをし、約3年間で500社以上の企業を支援させていただいています。
今では毎月100件以上のお問い合わせをいただき、毎月50件以上の資料作成を行っているのですが、リリース当時から順風満帆だったわけではありません。
リリース半年後に「資料作成代行業界でNo.1を取る」という目標を掲げ、全リソース、コストをc-slideに投入し、メンバーの採用も強化しました。
ところが「売上が上がるどころか、下がる」という大きな課題に直面し、営業組織の抜本的な改善が必要になりました。様々な施策を実施した結果、月次売上は3倍以上に成長し、事業を拡大することができました。
この記事では、事業拡大に向けてメンバーを採用したが思うように売上が伸びないなど同じ課題を抱えている経営者、営業マネージャーの方向けに、月次売上3倍成長を実現した7つの取組みについて解説しています。
同じ課題を抱える方に、少しでも役に立てればうれしいなと思います。
取り組む前に行った4つのこと
やみくもに改善アクションを行っても成果を向上させることはできません。
顕在している各課題に対して1つ1つ丁寧にアクションを行い、改善を繰り返すことが成果を向上させるための一番の近道となります。
改善アクションに取り組む前に、以下の4つを実施しました。
- 目標の明確化
- 課題の明確化
- 改善アクションの整理
- マイルストーン作成
1. 目標の明確化
まずはメンバーのモチベーションを高めるために目標を明確にしました。
「月間売上:1,000万円」のように、目標が大きすぎると何をすればいいのかがわからなくなるため、大きな目標を要素分解してKPIに落とし込みました。
- 月間売上:1,000万円
↓ - 受注数:50件
- 受注単価:20件
- 受注率:50%
2. 課題の明確化
目標を明確にした後は、各目標に紐づく課題を明確にしました。
ただ数字を見るだけでは本質的な課題を見つけることはできないため、営業メンバーの商談への同席や各メンバーへのヒアリングを通して課題を明確にしていきました。
- 受注率
- 営業トークがメンバーによってバラバラ
- 比較検討層の取りこぼしが多い
- 商談後のネクストアクションが不明確
- 案件単価
- 商談前のニーズ仮説の立証が不十分
- 課題解決のための提案ができていない
3. 改善アクションの整理
課題の明確化を行った後に、課題を解決するためのアクションの洗い出しと着手する順番を整理していきました。
ここで重要なのが、各アクションがどの課題を解決するために行うものなのかを明確にすることです。施策を続けていくと形骸化してしまうものや効果が見えないものが出てきます。
施策を続けるべきか否かを判断する際は「課題解決にどのくらいのインパクトがあるか」が基準となるため、準備段階から課題をアクションの紐づけることが大切です。
課題に対して整理したアクションは以下です。
- 受注率
- 営業トークがメンバーによってバラバラ
- 営業資料でトークを型化
- 比較検討層の取りこぼしが多い
- 商談後に社内検討用資料を送付
- 商談後のネクストアクションが明確になっていない
- 商談管理シートを作成し、BANT情報などをまとめる
- 定例ミーティングでネクストアクションを議論
- 営業トークがメンバーによってバラバラ
- 案件単価
- 商談前の仮説立証が不十分
- 商談前に戦略立案ミーティングを実施し、商談シミュレーションを行う
- 顧客の課題を解決する提案ができていない
- 商談に同席してもらい、トークパターンをストック
- 週2回、振り返りMTGを実施し、とにかくフィードバック
- 商談前の仮説立証が不十分
4. マイルストーン作成
営業組織再建のゴールは「営業メンバー全員が同じ成果を上げることができる状態」いわゆるセールスイネーブルメントです。期間の目標なしにずっと関わっていてもこのゴールを達成することはできません。
そのため「どのくらいの期間に、どのアクションを行って、いつゴールを達成するのか」のマイルストーンを作成して取り組むようにしました。
実際のマイルストーンは以下です。
- 10月:土台作り
- 営業資料の改善
- 社内検討用資料の作成
- 商談に同席してもらい、トークパターンをストック
- 11月:実践
- 商談前に戦略立案ミーティングを実施
- 週2回、振り返りミーティングを実施
- 12月:受け渡し準備
- 商談管理シートの作成・運用
- 定例ミーティングの報告フォーマットを型化
営業組織再建のために行った7つの取り組み
ここからは実際に行った7つの取り組みについてご紹介します。
マイルストーンに基づいた以下の順番で解説していきます。
- 営業資料の改善(土台作り)
- 社内検討用資料の作成(土台作り)
- 商談に同席してもらい、トークパターンをストック(土台作り)
- 商談前に戦略立案ミーティングを実施(実践)
- 週2回、振り返りミーティングを実施(実践)
- 商談管理シートの作成・運用(受け渡し準備)
- 定例ミーティングの報告フォーマットを型化(受け渡し準備)
1. 営業資料の改善(土台作り)
営業資料改善のゴールは、営業トークを型化し、受注率を上げることです。
このゴールを実現するために以下のステップで営業資料改善を行いました。
①成果が高いメンバーのトークを文字起こし
常に成果を上げているメンバーはお客さんがサービスによる課題解決イメージを鮮明に抱くことができるトークをしているはずです。そのため、営業トークの型化を行うにはそのトークの流れを資料に起こしていくことが効果的です。
成果を出しているメンバーの商談に同席し、トークの流れを文字起こしすることで、営業資料の構成の骨子にしていきます。
②何が受注率を上げる理由になっているのか仮説を立てる
営業資料作成においての一番の肝は受注率を上げている要因の見極めです。
c-slideはアウトバウンド営業を一切行っておらず、商談に至る顧客はすべてインバウンドもしくは知人等からの紹介が流入経路となっています。
インバウンドで流入する顧客は顕在化した課題を抱えている場合が多く、具体的な課題をどう解決できるかを求めて商談を設定しています。
成果の高いメンバーの商談に同席すると、課題のヒアリングや資料の具体的な活用場面などのヒアリングを通して資料の構成・活用方法の提案を行っていました。
このように顧客の流入経路や獲得チャネルから「受注率を上げるための要素仮説」を立て、営業メンバーの商談内容から検証を行うことが重要です。
c-slideでは「深いヒアリングからの資料の構成提案」が、受注率を上げるための要素になっていました。
③トークの流れを構成に落とし込む
トークを構成に落とし込む段階では、トップメンバーのトークの流れを参考にしながら、受注率を上げるための要因を落とし込むことが大切です。
c-slideでは以下の構成に落とし込みました。
- 挨拶・サービス概要
- 問い合わせ背景のヒアリング
- 依頼予定資料に関するヒアリング
- 構成・活用方法の提案
- 料金プラン説明
- ニーズに沿った事例紹介
- 今後のフローについて
④資料に起こす
最終の仕上げとして作成した構成をもとに資料に起こしていきます。
営業資料は顧客と対話しながら進めていく必要があるため、1ページごとに情報を詰め込みすぎず概要だけをページ内にデザインすることが大切です。
以下のような資料に落とし込みを行いました。
2. 社内検討用資料の作成(土台作り)
BtoBの営業において担当者レイヤーの方が商談相手だった場合、担当者レベルでは導入意欲が高くても社内で共有を行った際に決裁権を持つ上司への稟議が通らないといった自体が発生します。
また、外注先を決める場合は3~5社の話を聞いて比較検討をしないといけない、というルールが社内で設けられている企業もあります。
c-slideでは、直接話をしていない決裁者の同意を得られず比較検討層の取りこぼしが多発してしまっていました。そのため、「比較検討層の受注率を上げ、取りこぼしを防ぐ」を目的に以下の構成で社内検討用資料を作成しました。
- サービス概要
- ヒアリング内容整理
- 事例紹介
- 今後のフロー
社内検討用資料作成の最重要ポイントは、商談後の5分で作成できるようにすることです。数十分かけて作成する必要がある場合、いずれ活用されなくなってしまいます。
必要ページをコピペするだけで完成するよう、営業資料をベースに作成しています。
3. 商談に同席してもらい、トークパターンをストック(土台作り)
コンテンツが整備できれば、各メンバーに商談に同席してもらいます。
各コンテンツの使い方をレクチャーするのはもちろん、営業資料だけではカバーできないイレギュラーなニーズや依頼内容が発生した際の対応を学んでもらうことが主な目的となります。
ただ同席するだけでは学びを得ることができないので、以下の2つのポイントを踏まえて運用しましょう。
- トークパターンをストックする
学んだトークパターンは誰でもアクセスできるドキュメント等にまとめる - 不明点はその場で払拭する
商談終わりに15~30分程度時間を確保し、不明点をその場で払拭する
走り出しの段階では、不明点だらけで質問をしてもメンバーから不明点が出てこない可能性が高いです。最初は「なぜこの話し方をしたか」「なぜこの提案をしたか」など、自ら伝える時間にすると効果的です。
4. 商談前に戦略立案ミーティングを実施(実践)
1ヶ月ほど商談に同席してもらい、ある程度のパターンをストックできれば実践です。
初期フェーズは商談に同席し、2週間ほど経過したタイミングで一人で実施してもらうのがベストです。
c-slideの場合、受注率を上げるためのポイントが「深いヒアリングからの資料の構成提案」なので、商談前にクロージング戦略を立てることが重要でした。
そのため、「壁打たれミーティング」という名の戦略立案ミーティングを毎日朝イチに実施していました。この時間のゴールは質の高い提案ができるよう、各企業のニーズの仮説を立てることができている状態です。このゴールを達成するために以下のアジェンダで進めていました。
- 商談先の問い合わせ内容の整理・共有
- メンバーが考えたニーズ仮説の共有
- ニーズ仮説に対するフィードバック
- 課題解決のための提案内容を一緒に考案
4つめの提案内容の考案が最重要ですが、最初はメンバー自身が考えることが難しいケースがほとんどです。一緒に考えることで考え方を理解してもうことができます。
一人で考えることができるようになれば、戦略立案ミーティングは撤廃するのがベストです。
5. 週2回、振り返りミーティングを実施(実践)
メンバーが独り立ちし、同席なしで商談を行うようになれば振り返りの時間を設けます。
各商談を録画してもらい、チーム全員で録画を見返しながらフィードバックすることで、適切なアドバイスが行えます。
すべての商談の振り返りを行う時間は確保できないため、各メンバーに1~2個の商談をピックアップしてもらい、週2回以下のアジェンダで振り返りを行っていました。
- ピックアップした理由を共有
- 商談の概要と結果(受注 or 検討中 or 失注)を共有
- 特に聞きたいポイントを共有
- 動画を見てフィードバック
メンバー自身が聞きたいと思っていることが直接的な改善ポイントではないことも多々あるため、動画の中で気になる点は都度、意図の確認とアドバイスを行うことが重要です。
6. 商談管理シートの作成・運用(受け渡し準備)
戦略立案ミーティングや振り返りミーティングを通して受注率や売上が目標に近づいてきたら受け渡しの準備を始めます。
推進者が現場を離れた瞬間に成果が下がってしまうという状態を避けるために「課題に気づかせる」仕組みが必要となります。
売上だけの大きな目標だけを追っていると、売上の上がり下がりは把握できますが、なぜその結果になっているのかの原因を把握することはできません。
売上に紐づいた課題をすぐに可視化することができるよう、スプレッドシートで下記の項目を可視化しました。
- 月間商談数
- 月間与件化数
- 与件化総額
- 受注数
- 受注率
- 受注総額
- 受注ポテンシャル(確度の高い与件の総額)
加えて、「商談後のネクストアクションが明確になっていない」という課題を解決するために与件ごとにBANT情報の項目を用意しました。
BANT情報があることによって、比較検討のお客さんを受注するためにどんなアクションをするべきかのネクストアクションを考えることができます。
7. 定例ミーティングの報告フォーマットを型化(受け渡し準備)
商談管理シートを用いてネクストアクションの明確化を図りましたが、うまくワークしませんでした。記入しないといけない項目が多く、面倒に感じてしまったようです。
ネクストアクションの明確化に対するアプローチ方法を変更する必要があると思い、週1回の定例ミーティングの報告内容に追加することにしました。
定例ミーティングでは商談管理シートを用いて各目標数値の確認を行っていたため、その延長で検討中案件のネクストアクションを議論する時間を設けました。
報告フォーマットの型化はうまくワークしており、1年以上経った今でもメンバーが活用してくれています。
結果、月次売上3倍成長を実現
7つの取り組みを行った結果、20%前後だった受注率は50~60%まで向上し、受注単価も倍以上に向上した結果、月次売上3倍成長を実現しました。
メンバーに受け渡しを行った後も同水準の売上ないしはそれ以上の売上を上げ続けることができているため、「営業メンバー全員が同じ成果を上げることができる」状態を実現できています。
実際の売上推移をグラフに起こしてみました。(詳細数値は割愛しています。)
さいごに
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
改善のアプローチ方法は多々あると思います。必ずしもご紹介した方法がすべての企業、組織にフィットするとは思っていません。
ですが、アクションに取り組む際のスタンスがどの組織でも同様に重要だと思っています。
- マネージャーレイヤーのがフルコミットする
- メンバーに真摯に向き合う
- 自分、そしてメンバーのことを信じ切る
良くも悪くも、メンバーはマネージャーを見て育ちます。かける時間はもちろん、マネージャーレイヤーの方が熱量を持って取り組まない限り、メンバーにもその気持ちは伝わりません。
そして、メンバーに真摯に向き合いましょう。取り組みを開始する前に決起ミーティングを開催し、現状と目標を共有した上で「言いたいことは全部言う」ということを伝えるくらいの気持ちが大事だと思っています。
メンバーに圧をかけるのではなく、真摯に向き合い、伴走することが大切です。
さいごに一番重要なのは信じることです。
自分の取り組みを本気で信じていないマネージャーに、メンバーが本気でついてくるはずがありません。メンバーのことを信じていないのに、自分のことを信じてくれるはずがありません。
良いチームには信頼関係が必要です。必死で考えた取り組みに対しても、フルコミットしている自分のことも、一緒にがんばってくれているメンバーのことも心の底から信じましょう。
最後は精神論っぽい話になってしましましたが、この記事が成果の低迷に困っているマネージャーの方のお役に少しでも立てばうれしいです。