ワンスライドワンメッセージに潜む罠。意識すべきは”ワンスライドワンゴール”

湯淺 春樹

COO / デザイナー / セールス 湯淺 春樹

こんにちは!株式会社Coneの湯淺です。

ぼくらはConeは、資料代行サービス「c-slide」を運営していて、日々いろんな企業のいろんな資料を見ています。資料を見たうえで改善点をアドバイスすることもありますし、ぼくの場合は社内のPPTデザイナーに対してのチェックバックも行っています。

その時に思うのは「ワンスライドワンメッセージってムズくない?」ということ。

今日は、資料作成で言われがちな「ワンスライドワンメッセージ」について、ちょっと物申したいと思います。「ワンスライドワンメッセージ」じゃなくて「ワンスライドワンゴール」で考えようぜって話です。資料を作ることが多い方はぜひ見ていってください!

目次

なぜ「ワンスライドワンメッセージ」はムズいのか?

資料作成の基本として「カラーは3色以内に抑えよう!」とか「ワンスライドワンメッセージを徹底しよう!」とよく言われると思います。実際ぼくも社内での教育でよくこの言葉を使ってました。

ただ、実際にフィードバックをしている中で気づいたのが、「ワンメッセージ」の定義が曖昧すぎるということ。人によってワンメッセージに含まれる情報量が全然違うんです。

例えば、こんなスライドがあったとします。

このページのメッセージ

  • このサービスの強みはBtoBに精通したコンサルタントが伴走サポートしてくれる点です

挿入されている情報

  • コンサルタント4名の写真
  • 各人の経歴
  • 得意な支援領域
  • 過去の支援プロジェクト例

一見、デザインもきれいにまとまっていてワンメッセージも達成できていると思うんですが、そもそも情報量が多くて全部を読むことはないし、なによりもこのページを見ても、”伴走サポートしてくれる”ということは伝わりません。ただのメンバー紹介のページに思えちゃう。

この感覚を言語化してフィードバックしようとしても、「情報はワンメッセージに絞ろう!」だけだと説明がつかないので、この問題に気づきました。

“発信者目線”を”読み手目線”にズラしてみる

では、同じ内容を「ワンスライドワンゴール」で作り直すとどうなるでしょうか。この考え方の核心は、発信者目線から読み手目線への転換にあります。ワンメッセージとワンゴールの違いは、「情報を見る立場」だと思っています。

  • ワンメッセージ:あくまでも発信者側のエゴであって、主観的な情報
  • ワンゴール:受け手側の態度変容を考えた、客観的な情報

さっき例で出したページを、発信者目線ではなく”読み手目線”の「ワンスライドワンゴール」で作り直してみます。

このページのゴール

  • 「こんなにBtoBの知見がある人がサポートしてくれるんだ!」と思ってもらえる状態

挿入する情報

  • 支援のフロー
  • コンサルタントの得意領域

ワンメッセージに重きを置いたページの情報だけだと「すごそうな人がいっぱいいる!」と思わせるだけになってしまうので、「支援フロー」を追加しました。加えて、コンサルタントのプロフィール等はなくして、「得意領域」のみに絞りました。

どうですか?かなり印象が違うんじゃないでしょうか。

「戦略立案→施策考案→施策実行→分析・改善」の4つの支援フローを提示したうえで、すべてのフローをコンサルタントが支援するという見せ方にすれば、「すごそう!」しか満たせてなかった状態から「すごそうな人」が「伴走サポートをしてくれる」と思ってもらえる状態に変わります。

「読み手にどう思われたい?」を問いかけよう

これらのワンメッセージとワンゴールの違いを頭では理解できても、何を意識すればいいか難しいですよね?

コツは意外とシンプルで、「読み手にどう思われたいの?」と問いかけるだけです。「支援実績おおっ!すご!」とかそのレベル感でOK、人間は感情の生き物なのでどう思われたいかは定性的でいいと思ってます。

そして、このゴールは「資料全体のゴール」から「ページゴール」にブレイクダウンしていくとより考えやすくなります。

  1. 資料全体のゴール
  2. 各パートのゴール
  3. 各ページのゴール

で考えるイメージです。採用ピッチ資料は「ワンスライドワンゴール」の効果が特に分かりやすい例なので、多くの企業が間違えやすいポイントと、正しいアプローチ方法を具体的に説明します。

【実例】採用ピッチ資料内のページゴール

ほとんどの企業が、採用ピッチ資料を「会社情報を伝える機会」と考えていると思うんですが、採用ピッチ資料の目的は「ターゲットに応募してもらう」ことなので、会社に対してワクワクしてもらわないといけません。

資料全体のゴール

  • 資料を見たうえで、働くイメージを鮮明に抱き、入社に対してワクワクしている、前向きになっている状態

この資料全体のゴールを達成するために、各パートの構成に落とし込んでいきます。

  • 会社紹介:こんなに若い会社なのか!支援企業もたくさんいてすごそう!
  • 事業紹介:ユニークな事業してるな!なんだか楽しそう!
  • 環境紹介:福利厚生しっかりしてる!イベントもあって仲良さそうで楽しそう!
  • 採用情報:実際にはこんな仕事に取り組むのか!自分のできることとも近いし、楽しそう!

これらのパートゴールに落とし込むことで、「興味喚起 → 事業へのワクワク感醸成 → 働く環境へのワクワク感醸成 → 仕事へのワクワク感醸成」とワクワク醸成の階段設計をすることができ、結果的にターゲットの入社意欲を高めることができます。

そして、各パートのゴールを以下のように各ページに落とし込んでいきます。(すべて挙げるとキリがないので一部だけ。笑)

  • 会社紹介:こんなに若い会社なのか!支援企業もたくさんいてすごそう!

↓ このパートゴールを各ページのゴールにブレイクダウン

  • 会社沿革:最近設立された会社なんだ!
  • メンバー紹介:あ、経営者もみんな若い!
  • 支援企業数の推移:設立間もないのにこんなに支援してるの?すご!

ぼくらが支援をさせていただいたUUUM株式会社さんの採用ピッチ資料は、この方法を用いて資料全体の構成、各ページのゴールを設定しているので、ぜひ参考にしてみてください。

情報の取捨選択に迷ったら、全画面モードで客観視

「ワンスライドワンゴール」を実践する上で、誰もが直面する課題、それは情報の取捨選択です。

どこまで行っても主観は主観なので、ワンゴールを設定して情報を精査しても、思い通りにいかないとか、上司に見せてみるとわかりにくいと言われてしまうこともあります。

そんなときは、「一瞬で目に入る情報」を意識してみてください。「ページを見た瞬間にどの情報がいち早く視界に入り込んでくるか」を考え抜くことが大事です。

各ページのデザインをしているときに、何度もプレゼンテーションモードの全画面で見直して、オブジェクトの大きさやカラーの使い方を調整してみてください。ぼくや社内のPPTデザイナーは、おそらく1資料で100回くらい全画面でページを見直してるんじゃないかと思います。

※Mac:⌘+Enter / Windows:Shift + F5 で全画面モードを表示できますよっ

見た瞬間にどの情報が一番頭に入ってくるかを常に意識して改善しているので、この方法をするだけで情報の取捨選択や目立たせるポイントの改善に繋がります。

まとめ

「ワンスライドワンメッセージ」から「ワンスライドワンゴール」への転換は、発信者目線から受け手目線への転換です。

今日から実践できる3つのアクションをまとめてみたので、今から取り組む資料作成でぜひ実践してみてください!

  1. 「読み手にどう思われたい?」を常に問いかける
  2. ゴールは、資料全体 → 各パート → 各ページの順で落とし込む
  3. 全画面モードで「見た瞬間にどの情報が入ってくるか」を都度確認

特に営業資料やサービス紹介資料などの「相手を動かす必要のある資料」を作る際は、ぜひ「ワンスライドワンゴール」を意識してみてください。きっと、より伝わりやすく、より効果的な資料が作れるはずです。