AIが資料を1分でつくれるのに、資料作成代行サービスへの問い合わせが止まらない理由

佐藤 立樹

代表取締役 佐藤 立樹

はじめまして、もしかしたら二度目まして、そしてこれからもどうぞよろしく、小さいチームで大きな仕事をする最高の会社を作りたいと毎日唱えているConeの佐藤(@rk310117)です。

弊社は資料作成代行サービスc-slideを3年ほど運営しています。昨今のAIブームで「資料作成はAIですぐできる」といった風潮から、資料作成代行サービスはオワコンだと言う人もいます。

しかし現実はどうなのか。問い合わせ数は去年から減るどころか増えています。

なぜなのか。実際のビジネス現場で起きていることを整理してみます。

目次

「AIがアウトプットするものは、依頼者の質量に依存する」

クライアントから「AIを使ったらすぐできるみたいな風潮がありますが、御社はどう考えていますか?」という質問をもらうことがあります。

僕はこう答えています。「AIがアウトプットするものは、依頼者の質量に依存する」と。

たとえば新規事業の営業資料を作る場合を考えてみましょう。AIに依頼する人が以下を整理できているかどうかで、結果は大きく変わります。

  • ターゲットは誰なのか?
  • どう思ってもらうのがベストなのか?
  • どこで使う資料なのか?
  • そのピッチ・営業を通してどんなゴールを達成しようとしているのか?
  • そもそも自社プロダクト・サービスのUSPは何なのか?

これらがしっかりと整理できていて、解像度が100だとすると、AIは80〜100点の資料を返してきます。しかし解像度が30程度だと、AIが作成・提出してくる資料は10〜30点になってしまいます。

「その過程の整理もAIとともにすればいいじゃん」と言いたくなりますよね。

でも、これも同じです。ヒアリングをAIに適切にしてもらう「プロンプト」をひねり出せる技量が、その依頼者にあるかどうかの問題なのです。

資料作成において重要なこと

実際、弊社に寄せられる問い合わせの大半は、以下のような案件です。

  • 新規事業立ち上げに際しての営業資料・ピッチ資料作成
  • 営業資料の改善による受注率向上
  • 潜在層向けのホワイトペーパー作成(リード獲得の頭打ち解決)
  • 既存ホワイトペーパーの改善(DL数不足・商談化率の低さの解決)

どれも「成果」が直接問われる重要な資料ばかり。単なる情報整理では済まない案件です。

成果の出る資料構成には「仮説」と「事実」の両方が必要です。

たとえばSFAを提供している企業が営業資料を改善する場合、まずはリード情報から顧客の傾向と問い合わせ内容を分析します。そこから「顧客は商談で○○を知りたくて、○○が解決されれば導入したいと考えるであろう」という仮説を立てるのです。

SFAの場合なら、「SFAとエクセル管理の売上的インパクトの違い」「現場での使いこなしやすさ」を顧客が知りたがっていて、それが解決できれば導入してもらえるだろう、といった具合です。

しかし仮説だけでは不十分。「事実」を見に行く必要があります。失注になった見込み顧客と受注になった顧客、この2社間の違いを発見するために実際にインタビューを行います。そこから営業資料の構成改善のヒントが見えてくるのです。

営業資料改善のための構成作成ひとつをとっても、この「行動が伴うリサーチ」が成果を左右します。AIには難しい領域

「成果直結じゃなくて、とりあえずさっときれいなデザインで出してほしい」という要望もあります。ただ、結局は同じで、「AIがアウトプットするものは、依頼者の質量に依存する」ため、ぱっと出してもらったアウトプットは、到底現場で使える質のものになっていません。だから弊社に依頼が来るのだと考えています。

問い合わせが増えている理由

問い合わせが増えている最大の理由。それは依頼者が「自分の脳みそを整理できないから」ではないかと考えています。

成果を上げたいと依頼をしてくれる顧客は、「他社の時間と経験値を借りて、自社の成果を上げたい」と考えています。「AIを活用して」という文脈は、そもそも間違っているのです。

AIを活用するということは「自分たちでやる」ということ。時間をかけてAIと一緒に考えて、リサーチして、試行して、受注率が上がるように改善していく。その時間とノウハウがないから外注するのです。そういう人は最初からAIを使いません。

興味深いのは、全体的に問い合わせが増えている中で、スタートアップ企業からの依頼だけは微量増加にとどまっていること。

これは彼らの「質量が高いから」だと考えています。

資料フォーマットさえ用意しておけば、スタートアップにいる人たちは、資料デザインを整えるまでの工程をAIとともに進められます。最終的なデザイン調整部分で人の手が必要になりますが、社内にデザイナーがいれば社内で実行可能。

逆に言えば、これは「依頼者の質量」理論の裏付け。質量の高い人(ここではスタートアップ人)は少ない時間でAIとともにほぼ完成までこぎつけてしまう。一方で質量の低い人は、AIに質の高いインプットができないので、自分たちで完成までたどり着かない、といった具合です。

未来予想図

AIで「自分の言葉をすぐにビジュアル化できる」ようになったことは、むしろ嬉しい傾向なんじゃないかなとも思っています。AIにスライド作成を依頼し、その図解に違和感を覚えたら、「その違和感はなんなのか?自分が本当に言いたかったことはなんなのか?」と考えるきっかけになるからです。

これまでの思考と試行のスピード感とは比べ物にならないくらい、各人が深く考えるようになってきているんじゃないかなと。

それにともなって、デザインだけきれいにしてほしいという弊社への依頼は、少しずつ減っていくかもしれません。AIがどんどん進化して、自社フォーマットに合わせて資料をリデザインする業務には対応できるようになると思うからです。

しかし「脳みその整理」や「行動が伴うリサーチ」、そして「他社の時間と経験値を借りたい」というニーズは変わりません。

AIが1分で資料を作れる時代だからこそ、その自社の経験値を爆裂蓄積して、提供できる価値をどんどん大きくしていきたいなと思う所存です。

資料作成の外注をちょっとでも考えていたら、いっかい見に来てね(→ c-slideサービスサイト

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※ ちなみにこのブログもAIといっしょに作ってます。もっと面白い内容が書けるように自分の質量の底上げ筋トレしときます。