「顧客」ではなく「観客」をつけるオウンドメディアへの挑戦

佐藤 立樹

代表取締役 佐藤 立樹

これまで僕たちは、資料作成特化型メディア『シースラ』、BPOサービス比較メディア『b-pos magazine』と、事業単位のオウンドメディアを立ち上げてきました。

『シースラ』に関しては、立ち上げてから2年弱で年間100万人弱が訪れるメディアへと成長させることができました。

資料作成メディアのアクセス数に応じて、資料作成代行サービスの認知度が上がっていく一方で、会社はまだまだ無名。

僕たちの新たな目標として「小さなチームで大きな仕事をする最高の会社をつくる」というものがあります。それを達成するためにも、どんな会社なのかということをみなさんに知ってもらう必要があり、事業成長のためのメディア運営ではなく、ファンづくりとしてのメディアをやりたい、ということで、今回僕たちは新しいオウンドメディア『ConeTent(コーンテント)』を立ち上げました。

僕たちがこのオウンドメディアを立ち上げた背景を説明することで、これからオウンドメディアを実施したい企業や今オウンドメディアを運営しているがなかなか…といった企業にとってヒントになればと考えています。

目次

「顧客」獲得のためのオウンドメディア

事業を立ち上げて少しずつ軌道に乗り始めると、潜在層の獲得手段としてオウンドメディアの運用という施策が挙がることが多いと思います。(※ BtoB企業を対象としたbasic社の調査では、4割の企業がオウンドメディアを運営していて、2割が検討しているという結果が出ています)

僕たちがオウンドメディアの立ち上げに着手した背景としても、資料作成代行サービス「c-slide」を立ち上げて、LPを制作してリスティング広告に費用を投じて、顕在層の見込み顧客の獲得が安定し始めたことで、別の施策を検討していたという理由があります。

リスティング広告をはじめとした広告をずっと続けていると、顧客獲得に常にコストがかかり続けます。ただ、費用をかけずに「検索面」を抑えることができるならコストを下げながらリードを獲得しつづけることができます。

そこで、「顧客」獲得のためにオウンドメディアの立ち上げを決定しました。

結果として、2年弱で月間15万人が訪れるメディアへと成長させることができました。

『シースラ』の GoogleAnalyticsのキャプチャ

アクセスだけ集めればいいというわけではない!という点でも、オウンドメディアからの直接的な資料請求が月間10-20程度オウンドメディアからサービスページに流入してからの問い合わせも10程度上がっています。

オウンドメディアの成果としては、

  • オウンドメディアからのコンバージョン(売上創出)
  • サービスの指名検索数UP(認知度UP)
  • 競合比較なしの指名問い合わせ(リードタイム減)

と、正直僕たちの事業規模にしては大大成功です。

顧客獲得型のオウンドメディアを伸ばした方法

結果としてうまくいったと思っていますが、運営するうえで意識したポイントがいくつかあります。それを紹介していきます。

立ち上げ期

立ち上げたはいいもののオウンドメディアの運営はなかなか難しい。よく聞く失敗例が「更新が止まってしまって、アクセスもなければCVも起きないサイトがあるだけ」という状況になってしまうということ。

この失敗をしないために、初期は下記を徹底しました。

  • メディアの専任を置く
  • 最初に更新する記事コンテンツを50準備しておく
  • 初期は現場メンバー3名に執筆に参加してもらう

こうした理由としては「書く人」「書くこと」「書く時間」とそれを「管理する人」と「責任を持つ人」が決まっていれば、とりあえず更新が止まることはないだろう、と考えていたからです。

見事更新が止まることはなかったのですが、上位に表示される記事が少なく、工夫が必要になりました。

コンテンツ質 向上期

人が来てくれてはじめて、リード獲得の可能性が出るので、上位に表示されることは必須。そのため、上位に表示されるために少しずつ改善をしていきました。数々の改善を試しましたが、このシーズンにやったことで結果が出たのは「少しでも結果が出ている記事に他の記事内容を寄せていくリライト」です。

「パワポ 比較表」で2位を獲得していた記事に、他の同じ検索意図のKWの記事を、同じ構成に寄せてリライトしていきました。

結果、他の記事も同様に上位を獲得できてきて、上位を獲得しやすいメディアになった、のが大きかったです。

オリジナルコンテンツ 期

上位を獲得しやすいメディアになったことで、余裕ができたので「コンバージョンが起こる記事」を書いていこうということで

・営業資料 作り方
・提案資料 構成
・ホワイトペーパー 活用方法

などの、資料作成代行サービスに流入させることができるかもしれないキーワードで、社内のノウハウを記事化していきました。これがオリジナリティが高く、Googleさんに評価され、今やほとんどのKWで上位を獲得・コンバージョン発生記事となってくれています。

よくオリジナリティが大事と聞きますが、この「オリジナリティ」という言葉が曖昧すぎてどんな記事を書けばいいのか迷う人も多いと思います。

僕のひとつの定義としては、オリジナリティとは「Web上に落ちていない情報・知識・経験のこと」としています。

他の言い方だと、ChatGPTに聞いても出てこないこと、です。それが読者が気になっていることで、読者に価値提供ができているため、Googleが評価するということだと思っています。

この、

  • 立ち上げ期
  • コンテンツ質 向上期
  • オリジナルコンテンツ期

を経て、顧客獲得ができるメディアに成長させることができました。

顧客獲得型のオウンドメディアの落とし穴

『シースラ』から様々なオリジナルコンテンツが生まれ、コンバージョンも発生し、成功したと言えるメディアになりました。(シースラの記事内のパワーポイントテンプレートを活用して作った資料で提案されたこともあります。笑)

ただ、その成功とは裏腹に課題も感じています。

それは、サービスの知名度や売上が向上しているにも関わらず、運営元の株式会社Coneがまったくの無名ということ。

これまでは特に課題に感じてはいなかったのですが、今期に僕たちの目標が決まったことで、今の事業運営・メディア運営の形ではその目標が達成できない、と感じ始めました。

簡単に言うと「売上が上げることはできたとしても、会社の目標を達成することができない」という課題です。

会社の目標は『小さなチームで大きな仕事をする最高の会社をつくる』というものです。少人数で成果を出す会社を『Small up』と定義して、自分たちがそのSmall upの代表としてこの概念を浸透させるという目標です。

少し逸れてしまいましたが、つまり、SEOに寄った「顧客獲得型」のメディアではファンがつかない、ということです。

  • 運営元はどんな会社なのか
  • どんな想いで事業を運営しているのか
  • どんな人がいるのか
  • 次はどんなことをしようとしているのか

など、がまったく伝わらないのです。(これは、僕たちがConeの「資料作成事業」とはせず、「資料作成代行サービスc-slide」とサービス名をつけていることも大きな原因ではあるのですが、、、)

別に売上が上がればよくない?というのも、たしかにそうです。が、結果としてファンをつくることができれば、中長期的に売上にも寄与することになると考えています。

「顧客獲得型」のメディアは、事業がうまくいかなくなると機能しなくなりますが、メディアや会社にファンがついていると、次にどんな事業をやろうとファンが顧客になる可能性があります。

顧客獲得とは違い、そのファンがつくメディアを「観客魅了型」のオウンドメディアと呼んでみることにします。

「観客」魅了型のオウンドメディアへの挑戦

そこで、「顧客獲得型」のメディアも運営しながら、その「観客魅了型」のメディアに挑戦してみようと思います。それが株式会社Coneのメンバーの知識やナレッジを発信する「ConeTent(コーンテント)」です。

僕たちの「小さなチームの成果論」を発信していくことで、小さなチームのなにかヒントになれば嬉しいですし、そのまま観客(ファン)になってくれないかなと考えています。

観客をつけているオウンドメディアとして『Goodpatch Blog』『Knowledge/baige』『SAIRU メソッド』などがあります。

このメディアたちはSEO的な目に見える成果は大きくないかもしれませんが、業界の人間にはかなりの範囲で認知されていると思います。

しかもその認知は「デザイン会社だ」「Web制作会社だ」とかではなく「デザインで世界を変えようとしている会社だ」とか「豊富なノウハウを持っているWeb制作会社だ」とか、深い認知形成です。

顧客獲得型のメディアは、検索して一度メディアに入って知りたいことが知れると、ほとんどの人がそのメディアを忘れています。忘れるどころか認知すらしていないかもしれません。

ただ、観客魅了型のメディアは、知りたいことが知れた上に、次こんなコンテンツが読みたい、などでメディア(会社)を認知して、再度返ってくる可能性があります。

僕たちも、この観客魅了型のメディアを目指してConeTentを運営していくので、少しばかり応援していただけると嬉しいです。

■ 株式会社Coneは、小さなチームで大きな仕事をする最高の会社を目指しています。

僕たちは、アウトソーシングとテクノロジーを活用して、小さな会社でも大きな成果を生み出せるような事業を運営しています。少しでも興味を持っていただけたら、会社も事業も覗いてみてください。